JA熊本経済連(熊本県経済農業協同組合連合会)は2026年3月30日、出荷・食用にできないワケあり野菜(トマト・ナス)を和紙のシェードを持つポスターライトに再生した「灯るおやさい」のクラウドファンディングをMakuakeで開始した。JA経済連がオリジナルブランド商品を開発するのは初めてのことで、フードロス削減とアップサイクルの新たな取り組みとして注目を集めている。
「灯るおやさい」とは——野菜が照明に生まれ変わる
「灯るおやさい」は、規格外で出荷できないトマトやナスを乾燥・粉砕し、和紙製造の工程に漉き込んでシェードとして仕上げたポスターライトだ。点灯すると野菜の色や繊維質の質感がほのかに浮かび上がり、一点一点が異なる表情を持つ。着色料は一切不使用で、熊本産野菜のみを原料に使用している。
制作にあたっては和紙職人と連携し、伝統的な紙漉き技術で野菜素材をシェードに組み込んだ。ライト本体はポスターフレーム型で壁掛けに対応しており、インテリア照明としての需要も見込む。
なぜ今、農協がアップサイクル製品を開発するのか
背景にあるのは、農業現場で発生し続ける規格外野菜のフードロス問題だ。熊本県はトマト生産量全国1位、ナス生産量全国2位を誇る農業県だが、その一方で出荷規格を満たさない「ワケあり野菜」が大量に廃棄されてきた。
JA熊本経済連はこれまでもワケあり野菜の食品転用(加工品化)などに取り組んできたが、今回は「食品以外の分野」への挑戦として、照明というまったく異なるカテゴリに踏み出した。農協系の組織がオリジナルブランド「LIFE PRODUCT」を立ち上げ、クラウドファンディングで直接消費者にアプローチする手法は業界でも珍しい試みだ。
Makuakeで何を目指すのか
クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を選んだ理由は、テスト販売と認知拡大を同時に行えるからだ。生産数を絞り、支援者の反応を見ながら商品性を磨いていく狙いがある。熊本産野菜の魅力を「食べる」以外の形で全国に届けるとともに、フードロス削減・SDGsへの取り組みとしてメディアや消費者への訴求を強化する。
アップサイクルが農業・食品ロス問題に与えるインパクト
農林水産省のデータによると、国内の食品ロスは年間464万トン(2022年度)で、このうち農産物の生産・流通段階での廃棄も相当量含まれる。規格外野菜の多くは、外見上の問題(傷・変形・サイズ不適)にもかかわらず、栄養価や味は通常品と変わらない。
アップサイクル——廃棄されるはずの素材に新たな価値を付加する取り組み——は、食品の枠を超えて照明・雑貨・テキスタイルなど様々な分野で広がりつつある。今回のJA熊本経済連の事例は、農業とものづくりを結びつけるアップサイクルの可能性を示す好例だ。
Agritureでも、乾燥野菜や規格外野菜を活用した新しい形の農産物加工に取り組んでいる。関連記事:消費者庁が食品ロス削減第2次方針を閣議決定、消費者庁、4月1日からフードバンク認証制度を運用開始
