2026年、世界の食品廃棄コストは5400億ドルに達する見通しだ。これは前年の5260億ドルから増加しており、このまま推移すれば2025〜2030年の累積損失は3.4兆ドルに達する。New Food Magazineが専門家の分析をもとに報告したこの数字は、国連SDGsのゴール12.3「2030年までに食品廃棄を半減する」の達成が極めて困難な状況にあることを示している。
5400億ドルとはどれほどの規模か
日本のGDP(約4.2兆ドル)の約13%に相当する。世界中の人々が食べ物を捨てることで失われる経済価値が、これほど巨大だという現実は、農業・食品加工に携わる者にとって他人事ではない。
特に深刻なのが肉類だ。同報告では「肉は廃棄問題で最も難しいカテゴリ」と評価されており、世界全体の経済的損失は2026年だけで940億ドルに達すると試算されている。
日本の食品ロスの現状
日本では農水省と環境省が毎年食品ロス量を公表している。直近のデータによると、食品ロスは523万トン(2022年度)。うち事業系が279万トン、家庭系が244万トンだ。
| 区分 | 廃棄量 |
|---|---|
| 事業系(製造・流通・外食等) | 279万トン |
| 家庭系 | 244万トン |
| 合計 | 523万トン |
「もったいない」という文化があるにもかかわらず、年間500万トン以上の食料が廃棄されている。一人当たりに換算すると、毎日おにぎり約1個分の食料を捨てている計算になる。
農業現場から始まるフードロス
農業の現場では「規格外野菜」が廃棄の温床になりやすい。形が悪い、サイズが規格外、傷がついているというだけで出荷できない野菜が、産地で廃棄される。流通に乗らない農産物の廃棄は、農家の収入損失と環境負荷の両方を生む。
農水省の推計では、青果物全体の規格外率は品目によって10〜40%に及ぶとされている。
フードチェーン全体で取り組むべき3つの対策
1. 規格外品の加工活用
農産物の規格外を廃棄するのではなく、乾燥・冷凍・ジュース加工などで価値転換する取り組みが各地で広がっている。農水省も「食品ロス削減推進計画」の中でこれを奨励しており、補助金対象事業になっているケースもある。
Agritureが京都を拠点に取り組む乾燥野菜事業は、こうした規格外野菜を価値化するモデルだ。農家から規格外野菜を仕入れ、乾燥加工することで保存性を高め、廃棄ゼロに近いサプライチェーンを構築している。
2. 需要予測の精度向上
製造・流通側の食品ロスの多くは、需要予測の外れによって生まれる。発注過多→在庫過剰→廃棄という流れを断ち切るには、AIを活用した発注・生産管理システムの導入が有効だ。農産物特有の天候リスクを織り込んだ需要予測モデルの活用が、今後の競争力になる。
3. 消費者への日付表示の正しい理解促進
欧米では「製造日」より「消費推奨日(Best Before)」と「消費期限(Use By)」を分けた表示への転換が進んでいる。日本でも賞味期限(最も美味しく食べられる期限)と消費期限(この日以降は食べない方が良い期限)の違いを消費者に正確に伝えることが、家庭での廃棄削減に直結する。
SDGsゴール12と農業の接点
SDGsのゴール12「つくる責任、つかう責任」のターゲット12.3は「2030年までに食品廃棄を半減する」という目標を掲げている。これは農業・食品加工・流通・消費の全ステージが連携しないと達成できない目標だ。
農業事業者が「捨てない農業」を実践することは、単なるコスト削減を超えて、SDGsへの直接的な貢献になる。規格外野菜の加工活用・余剰農産物の冷凍保存・農家と加工業者の直接契約による余剰減少——こうした取り組みが積み重なることで、農業分野からのフードロス削減が実現する。
よくある質問
Q. 日本の食品ロス量は世界と比べてどれくらいですか?
A. 日本の食品ロスは年間約523万トン(2022年度・農水省)です。世界全体の食品廃棄量(約13億トン・FAO推計)に比べると比率は小さいですが、一人当たりに換算すると先進国水準の廃棄量です。
Q. 規格外野菜を活用するためにはどうすればよいですか?
A. まず産地ごとに規格外の割合を把握することが先決です。農水省の「食品ロス削減推進計画」では加工用途への転換を支援する補助金制度もあります。Agritureでは乾燥野菜としての受け入れ実績があります。
Q. SDGs目標12.3の達成には具体的に何が必要ですか?
A. 2030年までに食品廃棄を半減するには、農業・流通・消費者の全ステージで同時並行的な取り組みが必要です。農業段階での収穫ロス削減と、流通段階での過剰発注是正が特に効果的とされています。
