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京野菜で紡ぐシーズナルコースの組み立て方

―夏の命を、涼やかに一皿に閉じ込めて―

東京・神泉で「ぽつら ぽつら」「うつら うつら」を営み、両店でミシュラン・ビブグルマンを獲得した料理人・米山有(ヨネヤマ タモツ)氏が綴るコラムです。夏の京野菜をどうコースに組み立てるか、その発想とこだわりをお伝えします。

目次

夏の京野菜は特別な存在

夏の京野菜は、なんだか特別な存在です。
照りつける太陽の下、すくすく育ったその姿はどれも力強くて、でも、どこか涼やかで。
手に取った瞬間、すっと季節の空気が流れ込んでくるような、そんな気配を持っています。

お皿の上に季節をのせたい。
そう思ったとき、京野菜はとても頼もしい相棒になってくれます。

コースのはじまりに“涼”を添えて

夏のコースを考えるとき、まず頭に浮かぶのは“涼”という言葉です。
たとえば、はじめのひと皿。

冷たく仕立てた京トマトと加茂川茄子のピュレをお出しします。
完熟した京トマトは、ほんの少し塩をあてるだけで、驚くほど味が立ち上がります。
そこに軽く炙った加茂川茄子を加えてあげると、甘みや香ばしさが加わり、静かな余韻を残してくれます。

しっかり冷やした器で、ひんやりと。
ひと口目で、身体の奥からふっと熱が引いていく。
そんな一皿にしたくて、毎年この組み合わせを大切にしています。

軽快さと酸でつなぐ流れ

次の皿では少しテンポを変えて。
伏見とうがらしと鱧の白焼きを、すだちと梅肉でさっぱりとまとめます。

伏見とうがらしは、香りも味わいもこの季節ならでは。
じっくり焼くと甘みが増して、鱧の脂ともよく馴染みます。

この辺りの組み立てでは、酸の使い方がポイントになりますね。
さっぱりしているけれど、物足りなくならないように。
夏はどうしても食欲が落ちがちですから、香りや温度で軽やかに流れを作るよう心がけています。

メインを彩る賀茂なす

メインには、やっぱり賀茂なす。
夏の京野菜の代表格ともいえる存在で、育った時期によって味わいが変わるのがまた面白いところです。

8月の賀茂なすは特に香りが濃くて、とろけるようなやわらかさが魅力です。
私はそれを丸ごと炭火で焼いて、皮をむいて中のとろとろだけを取り出します。
そこに、九条ねぎを醤油麹オイルで和えたものをちょこんと添えて。

お肉もお魚も使っていないのに、まるで“主役”のような存在感が出るんです。
こういうお皿ができると、素材に教えてもらったなぁと嬉しくなります。

余韻を残す締めの一皿

最後には、水茄子と甘長とうがらしのお浸しを。
あえて少し前菜のような立ち位置に戻ることで、体の火照りをもう一度落ち着かせてあげる。

夏の終わりに、風鈴の音がふっと鳴って、静かに風が抜けていくような。
そんな余韻を、料理の中にも残したいなと思っています。

お酒とのペアリング

お酒とのペアリングも、もちろん大切な要素です。

たとえば、京トマトと茄子の冷製には、ほんのり泡のある甲州のペティアンを。
トマトの甘さと茄子の香ばしさに、優しい酸と泡が重なると、すごく涼やかになります。

伏見とうがらしと鱧には、冷やした純米吟醸の生酒がぴったり。
梅やすだちと調和して、口の中がきれいに整います。

賀茂なすの炭火焼きには、ちょっと熟成したシャルドネや、コクのある山廃の純米酒。
なすのとろみと香りに、そっと寄り添ってくれる存在です。

夏の京野菜と向き合う

夏の京野菜は、どれも生命力にあふれていて、でも押しつけがましくない。
まっすぐで、素直で、透明感があって。

だからこそ、私たち料理人は、手を引きすぎず、寄り添うように使っていく。

「涼しくて、元気が出る」。
そんな夏のコースを目指して、日々、野菜と向き合っています。

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旬になると野菜が自分らしくなる

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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