環境省が公表した2023年度(令和5年度)の食品ロス推計値は464万トンで、統計開始以来の過去最少を更新した。しかし数字以上に注目したいのは、内訳の変化だ。事業系(企業・飲食店など)の食品ロスが231万トンと、家庭系(233万トン)を初めて下回った。生産・流通・加工の現場で積み重ねてきた努力が、ついに数字に表れた形だ。
事業系が家庭系を初めて下回った「歴史的転換」
前年度(令和4年度)の472万トンから8万トン減少し、削減率は前年比1.7%。地味に見えるが、事業系単体では前年比2.1%の削減と、家庭系(1.3%減)を上回るペースで進んでいる。
| カテゴリ | 令和4年度 | 令和5年度 | 削減率 |
|---|---|---|---|
| 事業系合計 | 236万トン | 231万トン | ▲2.1% |
| 食品製造業 | ー | 108万トン | (47%) |
| 外食産業 | ー | 66万トン | (29%) |
| 食品小売業 | ー | 48万トン | (21%) |
| 家庭系合計 | 236万トン | 233万トン | ▲1.3% |
| 総合計 | 472万トン | 464万トン | ▲1.7% |
事業系の中では食品製造業が108万トン(47%)と最大の割合を占める。同業界では規格外野菜の有効活用や製造工程での歩留まり改善など、業界横断の取り組みが進んでいる。10年前の平成27年度(2015年度)は646万トンだったことを考えると、28%超の削減は目覚ましい成果といえる。
2030年目標まで残り「2.2ポイント」
日本政府が掲げる2030年度の削減目標は、事業系で2000年度(547万トン)比60%削減だ。令和5年度時点での削減率は57.8%に達しており、目標まで残り2.2ポイント。家庭系(目標半減・現在46.1%削減)より先に目標達成が見えてきた。
事業系の削減が進んだ背景には、コンビニ各社の発注精度向上、食品製造業での原料ロス低減、外食チェーンの廃棄管理強化がある。SDGs対応を本気で取り組む企業が増えたことも、数字を押し下げた要因の一つだ。
規格外野菜の活用が削減の「隠れた主役」
食品ロス削減のなかで、あまり語られないが重要なのが「規格外野菜の活用」だ。農産物の生産過程では、見た目や大きさが基準を満たさない野菜が一定量発生する。こうした規格外野菜を乾燥加工してパウダーや乾燥野菜として製品化することで、廃棄に回るはずだった農産物が付加価値商品に生まれ変わる。
乾燥加工は保存性が高く、輸送コストも低いため、農家・加工業者・食品メーカーの三者にとってメリットがある。実際にアップサイクル食品として展開されている事例も増えており、食品ロス削減と事業成立の両立が進んでいる。
規格外野菜とフードロスの関係を整理すると、乾燥加工はその解決策として最も現実的な選択肢の一つといえる。食品製造業が事業系食品ロス削減の47%を担っている以上、製造プロセスの見直しとともに、原料調達段階から廃棄を減らす取り組みが問われている。
家庭系を下げるには「保存野菜の習慣」が効く
事業系が先行する一方、家庭系(233万トン)の削減は課題が残る。家庭での食品ロスの内訳は「直接廃棄(未開封のまま廃棄)」が100万トン(43%)と最大で、「食べ残し」97万トン(41%)、「過剰除去」36万トン(16%)と続く。
直接廃棄を減らすには、食材を使い切れる量で買い、保存性の高い食材を活用する習慣が有効だ。乾燥野菜は常温で長期保存でき、使いたい量だけ取り出せるため、家庭での食品ロス削減に直結する。
食品ロス464万トンという数字は確かに下がっている。しかし一人当たりに換算すると、年間37キログラム、毎日約100グラムの食品を捨てている計算だ。事業系の努力に家庭の工夫が加われば、2030年の目標達成はより確実になる。
参照:環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について」|サーキュラーエコノミー ハブ「日本の食品ロス、過去最少の464万トンに」
