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農畜産業振興機構「野菜情報2026年4月号」がZEROCO鮮度保持技術を特集——氷温域保存が農業と流通にもたらす可能性

農畜産業振興機構(ALIC)が発行する月刊誌「野菜情報」2026年4月号に、ZEROCO株式会社が開発した野菜鮮度保持技術の特集記事が掲載された。同機構は野菜の需給・価格動向を調査・公表する公的機関であり、その専門誌への掲載は、業界内でZEROCO技術の注目度が高まっていることを示している。

目次

「野菜情報」掲載——公的機関が注目した鮮度保持の新潮流

ALICの「野菜情報」は、野菜流通・産地・政策に携わる専門家が参照する業界誌だ。2026年4月号(最終更新:2026年3月25日)では、ZEROCOの技術を「話題」コーナーで取り上げ、従来の保存技術との違いや農業現場への応用可能性を紹介している。

ZEROCO株式会社は2023年に楠本修二郎氏が設立したスタートアップで、「温度約0℃・湿度100%弱」という氷温域の環境を安定的に生成・管理する冷却庫を開発している。公的機関の専門誌がスタートアップの技術を特集するのは珍しく、それだけ技術の実用性と社会的意義が評価されたと見ることができる。

「雪下野菜」の知恵をテクノロジーに昇華させた第三の保存法

冷蔵(0〜10℃)と冷凍(-18℃以下)は現在の食品流通を支える二大保存技術だ。しかしこの二択には、それぞれ固有の限界がある。冷蔵は鮮度維持期間が限られ、長期保存には向かない。冷凍は保存期間を大幅に延ばせるが、解凍時の細胞破壊でドリップが生じ、食感や品質が劣化する。

ZEROCOが着目したのは、日本各地に古くから伝わる「雪下野菜」の発想だ。雪に覆われた地中で野菜は凍りつかず、むしろ甘みを増すことが知られている。この現象のメカニズムは、約0℃という氷温域において植物細胞が凍結を避けるためにデンプンを糖に変換し、同時に細胞自体はほぼ無傷で保たれることにある。

ZEROCOの冷却庫はこの「雪の下」環境を人工的に再現する。温度約0℃・湿度100%弱という精密な条件管理により、野菜の細胞を破壊することなく代謝活動を極限まで抑制する。結果として、結露・ドリップ・霜焼け・カビ・腐敗のリスクが大幅に低下し、冷蔵では到底実現できない長期保存が可能になる。

さらに冷凍食品製造において、冷凍前の予備冷却としてZEROCOを活用すると、細胞が安定した状態で急速冷凍できるため、解凍後のドリップが抑制され「出来立てのような」品質を維持できるという。これは冷凍と氷温域を組み合わせたハイブリッド活用であり、従来の冷蔵・冷凍の「どちらか」という二択を「どちらも最大限に活かす」発想へと転換するものだ。

なぜ今この技術が注目されるのか——農業構造変化と食品ロスの交差点

ZEROCO技術が「今」注目を集める背景には、農業と食品流通の双方が直面する構造的な課題がある。

農業側では、生産者の高齢化と担い手不足が深刻化している。2050年には70歳以上の生産者が6割を超える地域も出てくると試算されており、収穫・出荷作業の集中を平準化することが経営上の急務となっている。ZEROCOの技術は、豊作期に一気に収穫した野菜を長期保存し、需要に合わせて段階的に出荷するという「在庫保有型農業」を可能にする。農家が価格決定権を持ち、豊作時の値崩れを回避できるようになることで、「量を出す産業から価値を設計する産業へ」の転換が現実味を帯びる。

流通・外食側では、食品ロス問題への対応が経営課題として浮上している。日本の食品ロスは年間約500万トン、経済損失は約4兆円に達する。環境省が公表した令和5年度の食品ロス発生量は464万トンで、2030年目標の達成に向けた取り組みが急がれている。長期鮮度保持による廃棄削減は、この課題に直接アプローチできる。

ZEROCOはすでに京都の老舗料亭「菊乃井」に技術を導入しており、食材仕入れの不確実性軽減と仕込み・人員配置の平準化を実現したという実績がある。高級料亭という品質に妥協できない現場での実証は、技術の信頼性を示す強力な事例だ。また北海道千歳市(約165㎡)・熊本県熊本市植木町(約231㎡)・徳島県鳴門市(約331㎡)に保管施設を設置し、産地に密着したインフラ整備を進めている。

乾燥野菜との比較——補完関係として捉える視点

野菜の長期保存技術としては、乾燥野菜(干し野菜・フリーズドライ)も広く活用されている。両者は競合するようで、実際には用途が異なる補完的な技術だ。

乾燥野菜は常温保存・軽量・長期保管という流通・備蓄面での優位性を持つ。一方で加工工程で熱や乾燥にさらされるため、ビタミンCなど熱不安定な栄養素の損失や食感の変化は避けられない。

ZEROCOの氷温域保存は、野菜を生鮮の状態に近いまま長期保持することが最大の強みだ。「生野菜として使いたいが長持ちさせたい」という需要——高級飲食店・量販店の生鮮売り場・輸出向け農産物など——において優位性を発揮する。

食品ロス削減という観点でも役割分担は明確だ。乾燥野菜は規格外品・余剰品の有効活用に向いており、ZEROCOは生鮮品の廃棄タイムラグを延ばすことで売れ残り・返品ロスを削減する。農業の6次産業化においても、「生鮮で高値販売」か「加工で付加価値創出」かという二項対立を超え、両技術を組み合わせた多段階の出口戦略が可能になる。

農業・食品産業への示唆

ALICという公的機関の専門誌がZEROCOを特集した意味は大きい。政策立案者・流通事業者・生産者団体へのシグナルとして機能し、今後の補助金・実証事業・産地連携の対象として検討が進む可能性がある。

世界人口が2050年に約100億人に達し食料需要が1.6倍に膨らむ中、年間17億トンを超える世界の食品ロスは「40年後に養うべき人々の食料を今捨てている」状況とも言える。ZEROCOはこの損失を「4兆円規模の新市場」と捉え直し、鮮度保持技術をビジネスインフラとして社会実装しようとしている。

フードロス削減と農家の収益安定化を同時に実現できる技術として、今後の展開が注目される。消費者庁が2030年の食品ロス削減目標を60%に引き上げた現在、こうした技術革新が政策目標の達成を後押しする存在となり得る。

出典:農畜産業振興機構「野菜情報」2026年4月号 話題

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO
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